ユリア樹脂(尿素樹脂)dictionary

ユリア樹脂(尿素樹脂)とは?

ユリア樹脂(尿素樹脂)は尿素とホルマリンの反応により得られる熱硬化性樹脂である。

ユリア樹脂(尿素樹脂)は、多くのプラスチックが石油を原料としているのに対し、このユリア樹脂(尿素樹脂)は安価に安定供給される尿素が原料となっている点が大きな特徴です。

成形材料、接着剤、紙や繊維加工剤、塗料などとして需要がある。

耐熱性、表面硬さ、着色性に優れる。

ユリア樹脂は、良好な耐アーク性や耐トラッキング性を生かした電気火災安全性の高い配線器具や照明器具の部品に採用されている。

安価であり、鮮明な色調に自由に着色でき、表面硬度が高く、耐溶剤性、耐薬品性、耐アーク性、難燃性に優れている。

欠点としては、脆いため金属インサート晶では、クラックが入りやすい.耐水性に劣る。

ユリア樹脂の製法

ユリア樹脂(尿素樹脂)生成における初期反応は、ユリアとホルムアルデヒドの付加反応でモノメチロールユリアが得られ、続いてこのモノメチロールユリアが別のユリアと縮合反応してメチレンジユリアが得られる。このような付加縮合反応を繰り返し、架橋高分子になる。

ここで、中性またはアルカリ性条件下で反応を行うと、付加反応は早く進行するが、縮合反応が非常に遅いため、生成したモノメチロールユリアにホルムアルデヒドが付加してジメチロールユリアになる。酸性条件下で反応を行うと逆に縮合反応が速く進行するため、付加縮合反応を繰返し、やがてゲル化する。

工業的には一般にアルカリ性触媒(水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水、炭酸アンモニウム、ヘキサメチレンテトラミンなど)存在下、80~95℃で付加反応を行い、次いで酸性触媒(塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸など)を用いて系内を酸性にして付加縮合反応を進行させ、目的の分子量の樹脂が得られたら系内を中性に調整し、冷却後、製品(樹脂液)とする。ユリア樹脂は常温硬化が可能であるが、通常は加熱加圧によって硬化し、最終的には三次元網目構造を持つ架橋高分子となる。

1.成形材料

 ユリア1モルとホルムアルデヒド1.4~2.0モルの混合物を、水酸化ナトリウム水溶液あるいはアンモニア水などでpHを7~8の弱アルカリ性に調整し、30~70℃で数時間反応させる。次いで、得られたユリア樹脂初期縮合物(樹脂液)にヘキサメチレンテトラミンを1~8重量%溶解した後、20~30重量%のα-セルロースまたは木粉などの充てん材を加え、ニーダを用いて充てん材に樹脂液を含浸させる。ここでヘキサメチレンテトラミンを加えるのは、後の脱水乾燥工程でホルムアルデヒドの空気酸化によるギ酸の生成を防止するためである。これによって流動性の安定した成形材料となる。樹脂を含浸した混練材料は、熱風乾燥機を用いて60~100℃で乾燥することによりポップコーン状の乾燥成形材料となる。この時の残留水分は約2重量%である。この工程では縮合反応が進行するため、乾燥条件を注意深く管理しなければならない。成形材料は、上記材料を粗粉砕した後、硬化剤、着色剤、離型剤および可塑剤などを添加し、水冷式ボールミルで微粉砕して作製する。硬化剤にはシュウ酸ジメチルエステル、フタル酸無水物、有機ハロゲン化物、アミン塩酸塩、さらにサリチル酸尿素アダクトなどの潜在性タイプが好まれる。ユリア樹脂は無色透明であり、自由な着色ができる。着色剤としては中性ないしアルカリ性で、成形温度(130~170℃)に耐えるような有機顔料が一般に用いられる。成形材料の流動性を良くするための可塑剤として、種々のアルコール類やケトン類を添加する場合もある。離型剤としてはステアリン酸やそのマグネシウム、カルシウムなどの金属塩およびワックス類が使用される。

2.接着剤

 ユリア樹脂接着剤には、未濃縮タイプ、濃縮タイプおよび粉末タイプの三つのタイプがある。未濃縮タイプの樹脂は、加熱接着用で、合板(JAS2類)、パーティクルボード、中比重ファイバーボード(MDF)などの製造に用いられる。濃縮タイプの樹脂には減圧濃縮の程度によって、不揮発分60重量%程度の加熱接着用樹脂および不揮発分70重量%程度の常温接着用樹脂などがある。前者はパーティクルボード、MDFの製造、化粧単板(つき板)接着に用いられ、後者は挽き板を集成接着した構造物の内部部材(造作用集成材)や家具の製造、木工、つき板の接着に用いられる。さらに約160℃で噴霧乾燥した粉末状接着剤もつくられている。これは長期保存性が優れており、輸送にも便利で使用のつど水に溶かして利用できるため、接着層の水分を減らしたい場合に適している。濃縮タイプの樹脂液は、まずpHを4.0~4.5に調整した37重量%ホルムアルデヒド水溶液を95度に加熱し、次いでユリアの50重量%水溶液(ユリア:ホルムアルデヒド=1モル:1.6~2モル)を攪拌しながら加えて40~80分反応させる。次に、反応物に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHが約8になるように調整した後、減圧下、50~60℃で濃縮すると、不揮発分が約60~70重量%のやや粘調な樹脂液になる。縮合反応は酸の存在によって促進されるので、硬化剤としては種々の酸性物質が用いられる。これには顕在性と潜在性の二つのタイプがある。前者には無機酸、有機酸、硫酸ナトリウムのような酸性塩などがあるが、室温でも縮合反応が進行するため、材料の可使時間(ポットライフ)が短くなるという欠点がある。一方、後者にはカルボン酸エステル、酸無水物、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの塩類があり、成形時に生成する水分、あるいは樹脂中の遊離ホルムアルデヒドなどと反応して酸性物質を生成し、硬化を促進する。潜在性触媒として塩化アンモニウムを用いた場合、塩酸が生成するため、直接、酸を添加するより、可使時間が長くとれる。このような潜伏性硬化剤は貯蔵寿命および可使時間が長いため、好んで使用されている。さらに、増量による価格低廉化と粘度調節、可撓性付与および接着力向上などのために、小麦粉大豆グルー、木粉、クルミ粉末などが添加混在ざれることもある。

ユリア樹脂の性質

1.成形材料

 ユリア樹脂成形品の長所として、安価であり鮮明な色調に自由に着色でき、表面硬度が高く、耐溶剤性、耐薬品性、耐アーク性、難燃性に優れていることが挙げられる。しかし、脆く、金属インサート品ではクラックが入りやすく、遊離ホルムアルデヒドが析出しやすいなどの短所がある。また、ユリア樹脂は加水分解されやすいアミド構造を基本骨格に持つために、硬化物の耐水性が不良である。

2.接着剤

 一般に熱硬化性樹脂接着剤は、引張強さやせん断強さが高く、耐クリープ性に優れている。ユリア樹脂接着剤は、木材に対する接着性が優れており、常温接着が可能であること、硬化速度が速いこと、水溶性であること、安価であることなどが特徴である。しかし、衝撃強さ、剥離強さ及び耐水性に劣る。また、耐老化性や可撓性にも劣る。そこで、メラミン樹脂、フェノール樹脂あるいはグアナミン樹脂などと混合したり、共縮合を行って物性改善がなされている。しかし、他の樹脂分の割合が多くなるにつれて得られる接着剤の常温硬化性は低下する。また、硬化速度は速いが、分子量が低く、初期接着力が小さいため、接着作業に当たっては被着体をしばらくの間圧締しなければならない。さらに、硬化物の体積収縮が比較的大きいので、ひび割れしやすい傾向にあり、これを防止するためにフルフリルアルコールを添加することもある。

ユリア樹脂の成形加工

 成形材料は通常、圧縮成形により、一部はトランスファー成形や射出成形により成形される。ユリア樹脂は、一般に硬化が速い、充填剤の配向が大きい、収縮の方向差によるソリや変形およびクラック発生を起こしやすく、インサートがしにくい、ウエルドムラが出やすいなどの理由から、射出成形にはあまり適していない。しかし、現在では、これらの欠点を抑えた材料が市販されている。成形条件は、成形品の形状や大きさ、材料の流動硬化特性、さらには成形機よってもかなり異なる。

ユリア樹脂の用途

1.成形品

 ユリア樹脂成形品の約80%は、良好な耐アーク性や耐トラッキング性を生かした電気安全性の高い配線器具として、コンセントやプラグ類などに用いられている。また、照明器具の部品にも採用されている。さらに、麻雀パイ、将棋駒など娯楽用品、洗剤、化粧品、薬品容器などのキャップ、衣類のボタンなどの雑貨類、電車やバスの吊り輪、漆器の素地類などがある。また、現在では、厚さ1ミリで70~90%の光線透過率を持つ透明度の良い樹脂や、一般に熱硬化性プラスチックでは困難であったホットスタンピングが可能な材料なども開発され、前者は装飾品、照明器具及び娯楽用品として、後者は表面装飾、商標、マーク数字などの記入ができる各種成形品への用途がある。

2.接着剤

ユリア樹脂全体の約90%が接着剤として用いられている。特に合板、集成材あるいは内装材などの木工用接着に適している。また、机、テーブルの天板、建具、各種家具、建築内装材、車両や船舶などの内装材などとしてパーティクルボードを主とした人造木材用接着剤などに多用されている。しかし、耐水性が劣るため、屋外使用製品や構造材料への利用は避けた方がよい。

3.紙および繊維加工用

紙加工用樹脂は、化粧版厚紙、感光紙、塗工紙などの紙に対して紙力の増強、寸法安定性や印刷適性改良などを目的とした処理に用いられる。この用途には、テトラエチレンペンタミンのようなポリアミノ化合物やエタノールアミンなど、アミノ基を持つ化合物で変性したユリア樹脂、または、ユリア、アミン、カルボン酸、エポクロルヒドリンなどとの共縮合反応で得られる特殊な非ホルムアルデヒド系樹脂が用いられている。特に、非ホルムアルデヒド系樹脂はティッシュペーパーやタオルペーパーなどの和紙分解での需要が多い。繊維はユリア樹脂液で処理することによって、防しわ性、防縮性、撥水・撥油性、耐久性(耐洗濯性)などの向上、さらに風合や高級感なども向上させることができる。この種の目的には、メチロールユリアを主としてメチルエーテル化した樹脂およびユリアを種々のアミンまたはグリオキサールと反応させ、次いでホルムアルデヒドと反応させて得られるジメチロールグリオキザールモノウレインやジメチロールウロンなどの環状ユリア化合物が用いられている。

4.塗料

塗料用ユリア樹脂には、ジメチロールユリアを主成分とする水溶性樹脂と、メチロール基を酸性条件下でアルコールを用いてエーテル化した油溶性樹脂がある。ジメチロールユリアの形では室温で徐々にゲル化するので、工業的にはブタノールなどでエーテル化した樹脂が用いられる。アルコールの炭素数が多くなるほど、また、エーテル化度が高くなるほど樹脂液の安定性や得られる塗膜の可撓性は良くなり、一方、硬化速度は遅くなる傾向にある。このようにして得られたアルコール変性ユリア樹脂は、塩酸、塩化アンモニウム、p-トルエンスルホン酸などの酸性触媒の添加により硬化反応を起こすが、得られる樹脂硬化物は非常に脆く、このままでは塗料に不適当である。そこで、可撓性を付与するためにアルキド樹脂とブレンドした後、酸や熱によって硬化させ塗膜を形成する。酸を用いる常温硬化型は主として焼き付けのできない木工製品用に、また、加熱焼き付け型塗料は主として金属の塗装用に用いられ、スプレーや静電塗装法によって塗装される。熱硬化型アクリル樹脂と併用すると、耐光性や光沢に優れたいわゆるメタリック塗装ができ、また、エポキシ樹脂と併用することによって、高い耐食性塗膜が得られる。

〔出典 プラスチック読本、発行元 (株)プラスチックスエージ社〕

ユリア樹脂(尿素樹脂)の使用例

  • 配線・照明部品
  • 配線器具部品
  • 制御部品
  • 摺動部品
  • 日用雑貨品
  • キャップ類
  • 麻雀牌
  • 消孤室
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