圧縮成形(圧縮成型)dictionary

圧縮成形(圧縮成型)とは?

圧縮成形(圧縮成型)は、計量した成形材料を加熱した金型の凹部(キャビティ)に入れ、材料が加熱により軟化して適度な流動性をおびたときに、圧縮成形機で加圧して硬化させます。この成形方法は、各種プラスチック成形方法としては、もっとも歴史のある成形方法で、熱硬化性樹脂(プラスチック)の代表的な成形方法です。

圧縮成形の特長

  • 設備費や経費が安い。これは、成形方法が比較的単純なために必要とする成形機や金型、その他の設備が安く手に入り、経費も他の成形方法より少なくて済む。
  • 高密度の成形品が得られる。これは、成形機の成形圧力が直接金型内の成形材料に加えられて、金型内の隅々まで成形圧力が伝わり、高密度成形品ができる。
  • 幅広い種類の成形材料の成形が可能。これは、かさばりの大きい布チップやガラス繊維等が充填された成形材料、熱安定性や硬化特性などのためにトランスファー成形や射出成形では成形できない成形材料の成形が可能。
  • 成形時の材料の流れの方向性が少ないため、反りやウエルドが比較的少ない。
  • 量産性に劣る。これは、射出成形やトランスファー成形に比べて、材料の計量や投入等、成形準備と操作に時間がかかること、成形品に必ずバリが発生するので、その除去(仕上)にも時間がかかるので、成形作業に時間を要する。

1.圧縮成形に用いられる成形材料

圧縮成形に用いられる代表的な成形材料は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂である。樹脂の種類ばかりでなく原料樹脂の重合度や充填材によっても成形性(流動性、硬化速度など)や成形品の物性が大きく左右されるので、成形にあたっては、まず、目的に応じた適切な成形材料を選択することが肝要である。

2.圧縮成形の成形工程

2-1. 材料の秤量

成形材料は製品重量よりわずかに多めに秤量する。この量は金型の構造や成形材料の種類によって異なる。秤量された材料が少ないと、十分な加熱加圧が行われないので、かすれてしまい不良品になる。また、材料が多すぎると寸法がはずれた製品になったり、必要以上のバリが発生し材料ロスとなる。

2-2. 予備成形

成形材料は、通常、粉末状あるいは粒状であり、所要量を秤取してキャビティに装入するのであるが、生産ロットの大きい場合には、この取り扱いを簡単にするために、あらかじめタブレット化しておく。タブレットにしておけば予熱にも便利であり、バリも少なく、また、金型キャビティも浅くてすむなどの利点もある。タブレットするには予備成形機(タブレットマシン)を使用する。

2-3. 予備加熱(予熱)

成形材料は、一般に熱の不良導体であり、肉厚品の場合には内部まで熱が伝わって硬化するのにかなりの時間がかかるので、金型に入れる前に予備加熱しておくと成形時間が短縮できる。予備加熱には、熱風循環乾燥機や赤外線ヒーターも利用されるが、高周波予熱が最も効果的である。予備加熱を行えば硬化時間が短縮されるばかりではなく、湿気その他の揮発分が除かれるのでガスぶくれもなくなり、均一に硬化して成形品の内部ひずみが軽減される。また、成形圧力も低くて済み、インサートや金型の損傷も防止される。高周波予熱機には、平行極板式のものとローラー電極式のものがある。ローラー電極式の方が均一、急速予熱性が良いが、タブレットの大きさに制限があるので、大型成形品の多い圧縮成形法では通常、平行極板式のものが使用されている。この場合、タブレットとせずにボール紙の底板の上に高密度ポリエチレンあるいはポリプロピレン、テフロンのリングを置いて、その中に粉末を入れることも行われている。高周波予熱機としては出力0.5kWのものから10kW程度のものまで、また、周波数も27MHzから100MHzまで種々の形式のものが製作されており、樹脂の種類や使用量に応じて適当なものを選ぶことができる。

2-4. 材料の充填

成形材料を一定温度に保たれた金型の中に充填する。複雑な構造の金型、多数個取りの金型、容量の大きい金型などの場合は、装てんに時間がかかり材料の一部が硬化する可能性もあるので、補助器を用いて素早く装てんしなければならない。また、材料が金型の中で偏っていると疎密のある成形品ができることがあるので、できるだけ金型内に均一に装てんする必要がある。

2-5. 加熱低加圧

金型内の成形材料を加熱しながら加圧すると成形材料は可塑化状態になり、比較的低い圧力で流動する。しかし、さらに加熱を続けると架橋反応が起こり、成形材料の流動が減少してくるので、低圧では押し切れなくなる。従って、成形材料が金型の中で加熱可塑化されて流動性を示したときに、加圧によって金型の隅々まで成形材料が行き渡るように型締速度を調節する必要がある。

2-6. ガス抜き

成形材料を加熱すると材料の中の揮発物や水分がガスとなって発散する。このガスが成形品に内包されると「ふくれ」「す」「ひび」「くもり」「むら」などの成形不良の原因となる。これを防止するため、ガス抜きという操作を行う。まず、成形材料を金型へ投入した後、低い圧力(所定圧力の1/3~1/2程度)をかけて材料を軟化流動させて、軟化した材料が金型内に行き渡った頃、いったん金型を開いて圧力を抜いてガスを逃がす。数秒後、金型を閉じ切り、所定の圧力をかけて所定の時間硬化させる。このガス抜きのタイミングが遅れると硬化が進みすぎ、ガスの抜け方が不十分になると、不良の原因となる。高周波予熱機による予熱により、ガス抜き操作を省略することもできるが、予熱だけでは不十分な場合もある。特に、フェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂を成形する際にガス抜きは重要な操作となる。

2-7. 加熱加圧

ガス抜きの後、再度最適な温度と圧力で加熱加圧の工程に入る。この行程中に成形材料は金型の中で熱硬化反応を起こす。硬化時間は、成形材料の種類、金型の構造、成形品の形状、寸法などにより異なる。硬化の速い成形材料や肉薄の成形品は比較的短時間ですむが、硬化に時間のかかる成形材料や肉厚の成形品では比較的長時間かかる。硬化が不完全な時は成形品の表面にふくれが生じたり、光沢不良、ゆがみ、き裂、ひび、割れなどが発生し、物理的な特性も著しく低下する。

2-8. 冷却

成形品の成形ひずみを緩和したり成形品の型離れをよくする目的で、必要に応じて冷却作業を行う。成形温度より30~50℃低温にして成形時の圧力より低圧で冷却し、プレスを使用して行う。冷却を行うと成形品の光沢が良くなり、インサートを持つ成形品のひび、割れ、き裂などが防止される。しかし、金型温度が低下するために生産能率が落ち、複雑な形状の成形品は金型から抜きにくくなる可能性もある。寸法精度と製品形状維持のために、金属や木製の治具を使うことも多い。

2-9. アフターベーク(後焼成)

圧縮成形では生産効率を上げるため樹脂が十分硬化しないうちに金型から取り出すこことがある。未硬化の成形品は機械強度が弱く、揮発性未重合低分子物質が外部に放出されることがある。このような未硬化成形品を取りまとめて加熱炉で後焼成する工程をアフターベークという。硬化に長時間を要する肉厚成形品では、この作業によって成形サイクルを短縮することができる。通常、アフターベークは熱風循環乾燥炉を用いて行うが、加熱条件は樹脂の種類や成形品の形状によって異なる。アフターベークを行うと次のような効果がある。①硬化度が高くなるので、成形品の耐熱性・耐薬品性が向上する。②金型内での加熱と異なり成形品内の揮発分が逃げやすく、また、内部応力が開放されるので寸法安定性が高くなる。

2-10. 成形品の取り出し

成形品を金型から取り出す方法には、エジェクターピンを使用する方法とストリッパープレートを使用する方法がある。エジェクターピンを使用する場合、成形機の型開き動作の終わりに機械式あるいは油圧式押出装置によってエジェクタープレートを作動させて、エジェクターピンにより成形品を金型から突き出す。この方法を使う場合、突き出す力が成形品に均等にかかる位置にピンを配置する必要がある。また、リブやボスなどの型離れしにくい部分を考慮したり、成形品にエジェクターピンの跡が残ってはならない部分を避けて配置しなければならない。ストリッパープレートを使用する場合、これは成形品がコア側に残るときに使われる方法で、成形品の肉厚が薄いものや、取り出しの際に変形するおそれのあるものなどエジェクターピンによる突き出しが困難な場合、また、成形品にエジェクターピンの跡が残ってはならない場合に用いられる。手作業で成形品を金型から取り出す場合は、真鍮のヘラやゴムシート、あるいは吸盤等を使用する。成形品がキャビティにくっつかないようにするために離型剤として、ケイ素樹脂やフッ素樹脂のグリース、エマルジョン、あるいはカルナバワックス類やステアリン酸が使用される。

3.圧縮成形の成形条件

成形材料の成形性や成形品の品質は成形条件とも密接な関係があるので、正しい成形条件の設定が特に重要である。成形前に使用する材料の成形温度の幅・成形圧力・流動性を調べて、成形性をよく把握しておくことが必要である。

3-1. 成形材料の予熱温度

成形材料の予熱は、硬化時間の短縮、成形圧力の低減、材料中の水分や揮発分の除去などを目的として行なう。現在、最も一般的な予熱方法は、成形材料をタブレット状に予備成形し、高周波予熱機の電極板の間に挿入して加熱する方法である。高周波予熱後には、2枚の平行板でできている平行板電極方式のもののほかに、一対のローラー電極により円柱形タブレットを回転させながら比較的均一に加熱することができるローラー電極方式のものがある。高周波予熱を行なうときはタブレットの重量、厚さ、硬さを均一にそろえて、局部的な加熱を防止しなければならない。一例であるが、粉末の材料をそのまま金型に装てんした場合とタブレット化して高周波予熱をした場合、そして粉末のまま高周波予熱をした場合の三つの条件で圧縮成形したテストピースの曲げ強さと衝撃強さを比較すると粉末のまま高周波予熱をした場合の成形品が一番強いというデータがある。

3-2. 成形温度

金型に成形材料を入れて加熱加圧し、金型の中で硬化させるときの硬化速度は成形温度によって異なる。圧縮成形の場合は、成形温度は金型温度で表わす。熱硬化性プラスチックは加熱温度が高いほど硬化反応の進行が速くなるので、金型温度が高いほど硬化速度が速く成形時間が短縮するとともに製品の光沢もよいものができる。しかし、あまり高すぎると金型に接触している外部の高温部分では急速に硬化が進む。内部は温度が上らないので硬化の進行が遅く、各部の硬化度が不均一な状態になる。このため内部に発生したガスが閉じ込められてスができたり、成形品の表面にふくれがでたりする。また、成形温度が低すぎると硬化不足になって光沢不良や強度不足の成形品ができる。このため成形品の形状や肉厚、材料の流れ状態などにより成形温度を適温に調整しなければならない。一般に、厚肉の成形品は、予備温度を低めにして成形時間を少し長くしたほうがよい。一方、薄肉の成形品は、金型温度を高めに設定して成形能率の向上を計る。材料の種類によって適正な温度範囲がある。このような金型温度では、硬化時間は成形品の厚み1㎜当り1分程度である。有効な予熱を行えば、硬化時間はこの3分の1ぐらいまでに短縮できる。

3-3. 成形圧力

成形圧力は、成形材料を金型のすみずみまで充てんし、十分な密度の成形品を作るために必要である。成形に必要な所要圧力は、次のように表される。所要圧力=成形圧力(㎏/㎠)×成形品の投影面積(㎠)。成形品の投影面積とは、成形品に型締め方向に平行光線をあてたときに生ずる影の面積を言う。所要成形圧力は、成形材料の充填剤および成形品の形状に大きく左右され、材料の種類や流動性、成形品の形状によって異なる。一般にフェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂は、硬化過程で発生する揮発物質の一部はどうしても樹脂中に残存するので、これを封じ込めて緻密な成形品とするために比較的高い圧力が必要である。これに対して付加重合型樹脂では、軟化した材料をキャビティの隅々まで充填するだけでいいので、比較的低い圧力で成形することができる。ところが、実際の成形の際には、所定圧力より少し大きな圧力で成形した方が、いい成形品ができるので30%ほど安全率をみることがある。立ち上がりのある形状のものは、平たい形状のものよりも、20~30%程度大きい圧力で成形する。また、多数個取りの場合、成形品の投影面積に加えて、キャビティ間の面積も加えた成形圧力が必要となる。

3-4. 成形時間

成形時間は、金型を閉じて加熱しながら加圧を保ち硬化を完了させるのに必要な時間のことで硬化時間(キュアタイム)あるいは加圧時間とも呼ばれている。成形時間は、成形材料の種類、成形温度、成形品の肉厚、成形材料の予熱条件などによって異なる。成形時間と成形温度とは互いに密接な関係があり、成形温度が高いほうが成形時間が短くてすむが、高すぎても熱劣化したり、成形ひずみがでる。肉厚も薄いほうが成形時間が短くなる。一般に成形時間が短すぎると硬化不足になり、ふくれや表面の光沢不良を起して電気的、機械的特徴が低下する。また反対に長すぎると成形品の表面が変色したり、しわが出たりして成形不良となる。成形時間は、一般に成形品の肉厚に比例する。一般のフェノール樹脂の成形時間は、予熱しないときに1㎜あたり50~60秒が標準とされている。ユリア樹脂、メラミン樹脂ではいくらか短めにする。一般用フェノール樹脂を高周波予熱を行なって成形した場合は、硬化時間は予熱しない場合の約1/3に短縮することができる。

4.圧縮成形の応用例

4-1. 模様入り製品の成形

大理石やマホガニーのような模様のある成形品を作るには、2色以上の同質の成形材料を混合して使用する。また、印刷紙を表面に積層する方法もある。この方法はメラミン食器の絵付けに広く利用されており、成形の要領は次の通りである。まず、常法どおりに無地の成形品を成形する。そして完全硬化を待たずに開型し、メラミン樹脂を含浸させた印刷紙を半硬化製品の表面に重ねて再度成形するのである。このような2度押し成形技術を利用して、すかし模様の入った成形品を作ることもできる。その要領は、彫刻の入った雄型を用いてまず下地を成形し、不完全な硬化状態で型開きして下地の上への色使いの材料を挿入する。そして彫刻のない雄型に変えて再成形を行い、すかし模様入り製品とするのである。

4-2. 雌ネジの成形

化粧品の蓋その他の雌ネジを持つものを成形する場合には、金型を開いた後、成形品を回転させて雄型から外す。逆に雄型の方を回転させて自動的にネジを抜くことも行われている。開型後時間が経つと成形品は冷えて収縮するため、雌ネジは抜けにくくなる。従って雌ネジ製品は、開型後速やかに雄型から外さねばならない。

4-3. 不飽和ポリエステルプリミックス(湿式)の成形

この材料は一般的にBMC材料と呼ばれており、通常の粉末成形材料と異なり、液状樹脂に多量の充填剤(炭酸カルシウム)とガラス繊維を混入したパテ状材料で、著しく流動性に富み、硬化速度が速く、成形収縮が小さい、などの特徴がある。しかし、これらの特徴は成形性の点から見ると、一般的に好ましい性質とは言えない。すなわち、パテ状であり、しかも流動性が必要以上に良いことは、金型キャビティの角などに空気を閉じ込めやすいことに通じる。また、著しく硬化が速いことも、金型の均一充填を妨げ、成形品各部に硬化度差を生じ、インサートのある成形品では材料の合流点(ウエルド)の機械的強度を弱くする、などの問題を生ずる。従って成形にあたっては、適切な位置にエアベント(空気抜き溝)を持った金型を用い、上記問題点を考慮に入れた適切な成形条件を選ばなければならない。なお、乾式プリミックス(ペレット)は主として射出成形によって製品化される。

4-4. エポキシ樹脂の低圧成形

現在、IC素子、トランジスタ素子、ダイオード素子などのエレクトロニクス部品はエポキシ樹脂などの合成樹脂材料で封入されているものが多い。半導体材料は耐熱性が低く、機械強度も低いものが多い。エポキシ樹脂は液状樹脂で、低温で成形できる。エポキシ樹脂は電気絶縁性に優れ成形収縮率が低いから成形体のなかに埋込まれた素子に加わる応力をきわめて低くすることができる。エポキシ樹脂のエレクトロニクス素子封入成形条件は、成形温度120℃以下、成形圧力2~50㎏/㎠程度である。

4-5. 積層成形

IC素子やトランジスタ、抵抗、容量、インダクタンスなどの回路部分を組合せて作るプリント基板あるいは平板状の合成樹脂絶縁板、メラミン樹脂化粧板は、積層成形法で作られる。フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステルなどの溶剤に溶かし、紙、天然繊維、ガラス繊維などに含浸させて溶剤を乾燥させ、これを重ね合せて多段プレスに挿入する。熱板を加熱蒸気で加熱し、樹脂を含浸させた紙や布を重ね合せ、光沢研磨を施した鏡面板を当てて加熱、加圧して樹脂を硬化させて作る。現在、絶縁材料としての積層板はエレクトロニクス技術上きわめて重要で、テレビなどの家電分野または産業用電子機器に広く実用されている。また、デコラ板として親しまれているメラミン化粧板は、家電製品のなかに組込まれて愛用されている。

5. 成形不良と防止対策

5-1. アンダーキュアとオーバーキュア

熱硬化性プラスチックの成形では一般的に硬化反応を伴うが、硬化の程度が不十分(アンダーキュア)であっても、十分すぎ(オーバーキュア)でも良品は得られない。前者では耐水、耐薬品性、耐熱性に乏しく、寸法変化やソリが大きく、力学的性質も悪い。一方、後者では固いが脆く、クラックが発生する、などの欠点を生じやすい。適当な方法で最適硬化度を知り、これを達成するための最適条件を採用することが肝要である。

5-2. ガスぶくれ、ガス割れ

成形品の表面がふくれたり割れたりする現象で、成形材料中の揮発分含有率が高く、ガス抜き操作が不適切で、硬化が不十分な場合に発生しやすい。防止対策は揮発分、特に吸水率の低い材料を使用し、できれば予熱して硬化時間を長くするのがよい。金型温度を必要以上に上げることは、内圧が上昇するのでかえって逆効果である。

5-3. つや不良

含水率の高い流動性の良すぎる成形材料を使用すると、金型分割面からの材料流出量が多くなり圧力が十分かからないのでつや不良となることが多い。対策は材料の流動性および硬化特性をよく吟味するとともに、型締めのタイモングや速度を材料特性に合わせることである。一般には材料をやや高温度に高周波予熱したり、金型温度をやや高くするのが効果的である。

5-4. 流れムラ

流動性に富んだ淡色の成形材料に起こりやすく、材料の不均一予熱、金型の不均一加熱、材料含水率の部分差などがその原因となる。特にユリアおよびメラミン樹脂では流ヌラが出やすいので、上記原因を取り除くように注意するとともに、型締速度を比較的ゆっくりするのがよい。

5-5. 寸法不良、ソリ、クラック

これらはいずれも成形収縮または後収縮に付随した不良現象であって、その防止策も収縮を小さくする手段と軌を一にしている。まず、成形材料は比較的流動性の大きくないものを選び、できれば無機質充填のものを採用する。成形圧力は高い方がよく、金型温度はやや低めにして硬化時間は十分長くとる。ネジキャップのようなアンダーカットのある成形品では、開型から離型までの時間ができるだけ短くなるように心がけることも、ソリ防止の上から必要である。また、クラックの防止には成形品のデザインにも注意することが大切で、シャープなコーナーや肉厚の不均一はできるだけ避けなければならない。

6. 冷成形

金型を加熱せずに圧縮成形を行って未硬化の成形品を金型から取り出し、後で一括して加熱炉に入れて硬化させる成形方式を冷成形という。フェノール樹脂製の研削砥石は、冷成形の代表的な一例である。

7. 熱可塑性プラスチックの圧縮成形

熱可塑性の成形材料は通常、射出成形法によって成形するが、圧縮成形もできないわけではなく、厚肉品の成形や小規模生産の場合には利用されている。金型に成形材料を入れて加熱しておき金型を閉じ、プレスに挟んで加圧するとともに金型を冷却する。冷却後、型を開いて成形品を取り出す。硬質塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネートなどに適用されるが、工業的な実用例は少ない。長繊維強化熱可塑性プラスチック材料は、スタンパブルシートとして圧縮成形に供される。シートより適当な形状に裁断し、赤外線加熱炉で溶融状態近くまで予熱した後、金型を用いて賦形する方法でる。樹脂としてはポリプロピレン、ポリアミドなどが用いられ、自動車用部品の成形に用いられている。

8. 圧縮成形用金型

8-1. 圧縮成形用金型の基本構造

圧縮成形用金型は各種のプラスチック用成形金型の基礎となるものである。フラッシュモールドは、平押し型あるいは流出型とも呼ばれ、下型(キャビティ)に成形材料を入れ、上型(コア)を閉じると圧力がかかるに従って、余分の材料はバリ(フラッシュ)となって型の分割面からあふれ出るようになっている。特徴としては、長所、①成形材料は正確に秤量しなくても少し多めに入れればよいこと、②多数個取り型に適すること、③金型製作費が安い、④金型の損傷が少なく寿命が長い、などが挙げられる。しかし、短所として①材料の損失が多い、②成形材料の装入場所が小さいので、かさばった材料は成形が困難になる(タブレット化する必要がある)、③バリが厚くなりやすいので、バリ取りの費用が必要になる、④高密度の成形品ができない、などが挙げられる。一方、ポジティブモールド(positive mold)は押込み型とも呼ばれ、完全なピストン型であるため型締力はそのまま成形圧力として成形材料にかかる。しかし、成形品の寸法・重量をそろえるためには材料の正確な秤量を必要とする、金型の摩耗が激しく、損傷しやすいなどの欠点がある。セミポジティブモールド(semi-positive mold)は半押込み型とも呼ばれ、上記両者の長所を組合せたもので、実際に使用されているのはこのタイプのものが多い。金型が閉じていく時、最初はフラッシュモールドのように余剰の成形材料は流出するが、コアの型の部分がランドにあたるとバリの流出がとまり、後半はポジティブモールドのように成形品に圧力がかかる。従って、材料の秤量もさほど正確さを要せず、また、装入室も必要に応じて大きくできる利点がある。ランデッドプランジャモールド(landed plunger mold)は、フラッシュモールドに材料の装入室を補ったものである。フラッシュモールドより十分に圧力がかかり、セミポジティブモールドとよく似た利点がある。バリの発生方向はセミポジティブモールドの場合と異なる。ローディングシューモールド(loading shoe mold)は、フラッシュモールドに材料の装入枠を設けたものである。ランデッドプランジャモールドと同じような特徴を持っているが、金型製作が容易で、場合によっては製品の取出しも容易である。割型(split mold)は、ボビンや雄ネジなどキャビティ部を二つ割にする必要がある製品の成形に用いられる。実用化されている金型では、このタイプを応用しているものが多い。

8-2.実用金型の構造と金型の加熱方法

圧縮成形用金型はその操作方法により、手動金型(ハンドモールド)と取付け金型に分類できる。手動金型は、成形材料の装入、成形品の取出しおよび金型の開閉などの操作を人手によって行う。従って、金型は手で取扱える範囲の重量でなければならないし、生産能率が悪いため試作品、ピンやインサートが多くて自動取出しの困難な製品などに用いられる。これに対して、取付け金型は大型製品ないし多量生産向きで、金型には成形品の自動取出装置を付ける場合も多い。金型の加熱は以下のように行う。手動金型の場合は、圧縮成形機の固定盤と可動盤にヒーターを挿入した熱盤を取付け、これからの伝導熱だけで加熱する。取付け金型の場合は、金型内にヒーターを組入れて加熱するのが一般的である。熱盤と併用する場合もある。

9. 圧縮成形機

圧縮成形機は、成形材料を入れた金型を加熱加圧して、圧縮成形を行なうときに使用する成形機械である。圧縮成形機には、ねじプレスのような機械式のもの、油圧で作動させる油圧式のもの、ねじ付油圧プレスのような機械油圧併用式のものなどがあるが、一般に油圧式のものが使用されている。油圧式のものには、単動式、復動式、スライド式、ロータリー式、連立式などがある。

9-1. 単動式圧縮成形機

単動式圧縮成形機は、金型を締めつける方向だけに油圧が加えられる方式のもので、金型を成形機に入れたり、出したりして成形しなければならない。したがって、比較的小型のものが多い。単動式は加圧方向が上向きの上押型成形機で、固定盤と可動盤には熱盤が取付けられている。成形材料を入れた金型を可動盤側の熱盤の上に載せ、油圧によって可動盤を上昇させて上下の熱盤の間で金型を加熱加圧して圧縮成形を行なう。成形完了後型締シリンダ内の圧油を放出し可動盤を自重で下降させ、金型を成形機から作業台の上に移動させ金型を分解して成形品を取出す。

9-2. 復動式圧縮成形機

復動式圧縮成形機は、金型を締めつける方向と金型を開放する方向と両方向に油圧が加えられる方式のもので、金型を固定盤と可動盤に取りつけて成形することを目的としたものである。復動式には、加圧方向が上向きか、下向きかにより上押形と下押形とがある。腹圧式圧縮成形機は、成形完了後全型開放の最終位置で成形品が自動的に金型から突出されるように、製品突出装置が設けられている。この装置は、機械式または油圧式に押出レバーによって金型のエジェクタプレートを作動させて、成形品を金型から突出す。

9-3. スライド式圧縮成形機

スライド式圧縮成形機は下押型の型締機構を備えており、上型を1個、下型を2個使用して下型の位置を移動交換して、交互に圧縮成形を行なうものである。一方の下型を用いて成形している間に、すでに成形が終った片方の下型から成形品を取出し、金型を清掃し、つぎの成形のためのインサート(埋込金具)の挿入や成形材料の供給を行なう。成形が完了すると上型を開放し、下定盤を摺動させて下型の位置を交換して、つぎに成形に入る。以下この作業を繰返し、成形が行なわれる。スライド式は、インサートの挿入や成形材料の供給に長時間を必要とするものの成形に能率的に利用される。

9-4. ロータリー式圧縮成形機

ロータリー式圧縮成形機は、数組の金型を使用してこれを順次間欠回転させながら材料の供給→金型の閉鎖→低圧加圧→ガス抜き→高圧加圧→金型の開放→成形品の取出の全工程が一周するうちに完了するように構成されたもので、各ステージの操作時間が見かけの成形サイクルとみなされる量産用の圧縮成形機である。ロータリー式には、数台の圧縮成形機を回転盤の上に等間隔に固定して間欠回転させながら1人の作業者が定位置を離れることなく順次各成形機を操作する方式のものや、数組の型締機構を円周上に等間隔に配置したフレームを間欠回転させながら前記の動作を自動的に行なわせる方式のいわゆる全自動式のものがある。

9-5. 連立式圧縮成形機

連立式圧縮成形機は、数基の圧縮成形機を1つの架構に横1列に並べて配置した構造のもので、据付面積が縮小され作業能率もよい圧縮成形機である。各成形機に同じ金型を取付けて作動させると多種少量生産ができる。また、数基の可動盤を連結させれば数倍の加圧力が得られ、長物の成形も可能になる。

〔出典 プラスチック読本、発行元 (株)プラスチックスエージ〕

圧縮成形(圧縮成型)の特徴

  • 低い成形圧力で成形が可能(他の成形方法に比べて成形圧力が低いので、同じ型締力のプレスを使用する場合、他の成形方法よりも大きな投影面積の製品を成形できる。また、同じ大きさの製品では1型の取り数(キャビティ数)を多くすることができる)
  • 使用する材料の種類に制約がない
  • キャビティに充分な成形圧力がかかるので緻密な成形が可能
  • 材料の配向がないため、樹脂の特性を生かした高強度の成形品ができる
  • 金型を開いて成形材料を直接投入するため、スプルーやランナーあるいはカルなどの材料ロスが少ない
  • 成形圧力が直接製品にかけられるため、大型製品や厚肉製品の成形に適している
  • 成形圧力が直接製品にかけられるため、成形品の内部応力が少ない
  • 成形の際に金型を開閉するため、厚み方向の寸法精度が出にくい
  • インサートを入れ易い
  • バリが厚く、仕上に時間を要する
  • 無人化できない
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